その基準、誰の基準?作業タクトの落とし穴と本当の基準の作り方
職場でも日常生活でも、気づかぬうちに「自分ができる基準」を
他人に求めてしまうことがあります。
今日は現場での相談をきっかけに、その落とし穴と解決のヒントについてお話します。
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現場からの相談
先日、あるライン作業員からこんな相談がありました。
> 「あの人の作業タクトが3秒で速すぎます。
4秒という基準にしてもらえませんか?」
理由を聞くと、後工程の作業者が新人だった場合、そのスピードでは負担が大きいからとのこと。
そこで私は新人さんにも聞いてみました。
> 「そりゃ遅い方がいいですよ。
でも、それでいいならもっと遅くしてほしいくらいです。」
……はい、まさかの答えでした。
現在、作業タクトの明確な基準はありません。
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私は提案者にこう返しました
> 「提案ありがとう。作業の基準を決めるのはとても良い取り組みですね。
実は私も後工程をやったことがありますが、かなり大変でした。
なので、私はタクトを10秒に設定したいのですが、どうでしょう?」
すると提案者は即座にこう言いました。
> 「それは遅すぎます。努力すればもっと早くできます。
4秒までは頑張ってもらわないと!」
私:「それ、3秒でやっている人も同じことを言ってましたよ?」
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知らぬ間に“あなた基準”になっていませんか?
このやりとりで気づいたのは、
新人のためを思っているようで、実は自分のレベルを基準にしていた、ということです。
私も似た経験があります。
早稲田大学に行った知人はこう言いました。
> 「有名私立大学は努力すれば行けるよ。でも東大いく人は別格で才能が必要なのよ。」
一方、東大合格者の知人はこう言いました。
> 「誰でも努力すれば東大は行けますよ。」
どちらも悪気はないのですが、結局は“自分の経験”を基準にして話しているんです。
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では、こういった場合はどうするか?
まずはやり方の基準を明確にしましょう。
たとえば——
> 「右手で製品を手に取って一回転させてチェックしながら、
左手に持ち替えた後、次のコンベアに置きながら、
右手で次の製品を手に取る」
というように、動作の流れを基準化するのです。
タクト(時間)はあくまで目安。
共同作業の場合は習熟度によって話し合い、柔軟に調整することが大切です。
もちろん、このあたりは完全に数値化するのが難しいので、ある程度の属人化は避けられません。
だからこそ、自動化ツールの導入を検討するのも一つの手です。
(ただしこれは状況によるので、ここでは深入りしません)
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無意識の「100m10秒ルール」
もしかしたら、あなたも知らぬ間に——
> 「100mを10秒で走ってください」
と言っているかもしれません。
自分にとっての“普通”が、相手にとっては“特別に速い”場合もあります。
だからこそ、基準を決めるときは、自分基準ではなく、多くの人にとって妥当かどうかを意識する必要があります。
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まとめ
基準を決めるとき、人はつい自分の経験や感覚をもとに考えてしまう
それは悪気がなくても「無茶振り」になる可能性がある
動作基準を明確にし、タクトは目安として柔軟に調整する
属人化が避けられない場合は、自動化も視野に入れる
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あとがき
あなたの職場や生活の中で、
「よく考えたらあれって相手の“自分基準”だったな」と思う経験はありませんか?
逆に、自分もつい“自分基準”を押しつけてしまったことは?
ぜひコメントやメッセージで教えてください。
一緒に「本当に妥当な基準」について考えていきましょう。